アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本 (星海社新書)
一年に放映されるアニメの本数が、ここ最近増え続けています。特に2010年代になってからは、100本を超えるアニメが放映されています。これを可能にしたもののひとつが製作委員会方式です。多数の会社が出資して製作委員会を組織することで、リスクを分散してアニメを作ることができます。しかし、資金が集まっただけではアニメを作ることはできません。昔も今も、物語を作り、形にして動かすのは人の営みです。昔と違うのは、アニメを作る技術・工程が高度化・専門化して、関わる人が幅広く、そして多くなったことです。この本では、そんな複雑なアニメ制作の全行程に関わる「制作進行」という役割を通じて、アニメがどうやって作られるかを紹介しています。
筆者自らも制作進行の経験がある上、後進の育成にも熱心に取り組んできたため、アニメ制作の工程が分かりやすく、現実味のある内容で詳細に紹介されています。キルラキル風の書体や、レイアウト・絵コンテなどのアニメ制作素材が要所要所に配置されていて、読んでいて飽きが来ないのもポイント高し。ちょうど、アニメ制作を題材にした神アニメ「SHIROBAKO」が放送中ということもあって、アニメがどのように作られているか、改めて理解することができました。
また、本書では制作進行が何をする必要があるか、そしてそのためにはどのような点に注意すればよいか、経験を元にして具体的に書かれています。アニメ制作独特の内容も多いですが、他の業界にも通じる仕事のコツのような内容もあって、参考になりました。アニメ制作は分業作業で、高度な技術を持った様々なプロフェッショナルが作品作りに関わります。同じような分業作業、例えばシステム開発などは、本書の内容が活かせることが多いでしょう。
様々なアクシデントが必ず発生します。これをどうにかするのが制作進行のスケジュール管理です!スケジュールをたてることではなく、スケジュール通り現場が動くようにアクシデントに対処し、ひとつひとつ解決することが「管理」なのです。
制作進行のスケジュール管理を紹介した内容ですが、身につまされますね。胃がきりきりと痛む気がします。ちなみに、管理に失敗するとこうなります。
他にも、チーム作りや新人教育、それに業界に憧れる若人へのメッセージなど、多彩かつ自分にも参考になる内容で、ためになりました。
あとは自分の仕事に活かすだけ、ですね。がんばらなくっちゃ。