久しぶりに、自転車関係の書籍を購入しました。

自転車雑誌「Bicycle Quarterly」の編集長を務めるヤン・ハイネさんの著書です。

サブタイトルは「舗装路からグラベルへ1台で駆け抜ける速く快適な自転車の科学」です。グラベルバイクやオールロードバイクが盛り上がりを見せる最近の自転車シーンを、立ち止まって自分なりに理解する手助けとして手に取りました。コロナ禍を発端とした自転車価格の高騰にどのように向き合うのか、という問いに、自分なりの答えを出す役にも立つかもしれない、という期待もありました。

装丁も中身も青色の一色刷りというスパルタンな仕上げにシビれます。

カラー写真はありませんが、合間に挟まれるイラストが理解を手助けしてくれます。

ホイールが発明されて5000年のくだりにはクスッとしました。確かに車輪の発明からはそれくらいの時間がたっています。ジョークはさておき、内容は簡潔明瞭で論理的です。これまで自転車を乗り込んできて身体的・感覚的に理解していた事柄に、明快な説明が与えられた点も多く、蒙を啓かれた気分です。
特に印象的だったのは、フェンダーを評したこの部分です。
フェラーリの市販車はフェンダーを装備しているが、それがスポーツカーであるかどうかを疑う人はいない。ところが、自転車のフェンダーは、その自転車が走行性能重視で設計されたものではないかのような象徴としてとらえられがちである。そんなことはない。
確かに、と頷くことしきり。フェンダーやフロントフォークラック用のダボ穴を備えたアドベンチャーバイクが脳内に鮮やかに浮かんできました。欲しい気持ちが高まって危険です。
- 乗り手の体重を考慮するとバイクの車体重量が走行抵抗に与える影響は小さい
- 運搬する必要のある旅行用の自転車は軽い方がいい
- ホイールの転がり抵抗は改善の余地が大きい
- 25mmよりも太いタイヤでは転がり抵抗には差がない
他にも参考になる内容が盛りだくさん。太いタイヤを履いたグラベルロードが気になる方にはぜひ手にとってもらいたい一冊でした。

今乗っているTCRは、700cのカーボンセミディープホイールに25cのタイヤを履いたフルカーボンフレームの自転車です。自分にとって、ある用途・楽しみ方における完成形の一つに感じられます。ただ、自転車の楽しみ方は無数に存在するはず。本書は、自転車をもっと自由に楽しめる可能性を感じられた良書でした。自転車価格の高騰が落ち着いたら、新たな自転車の楽しみ方を考えてみたいと思います。