映画「トラペジウム」が一部界隈で話題のようです。劇場によってはかなりの席が埋まる大入りのところもあったとか。トラペジウムの話題を見てふと思い出したので、自分の写欲への刺激も兼ねて作中のカメラとレンズに再注目してみました。
トラペジウムの作中では、写真が重要な意味を持つ場面がいくつか登場します。写真が登場するということは、それを撮影するカメラも登場するわけです。カメラの世界ではスマートフォンが圧倒的な台数を誇っていますが、トラペジウムでは星が被写体の一つだけあって、スマートフォンではないいわゆるレンズ交換式のカメラも登場します。星の撮影にスマートフォンはまだまだ主流ではないですからね。
東西南北の美少女4人が目を惹くこちらの写真も、レンズ交換式のカメラで撮影されたという筋書きになっています。
この写真の撮影シーンがエンドロールに登場しています。写真を趣味にする私としては、ついつい機材に目が行くシーンです。
まず目に入るのはレンズ前面の文字です。写真撮影用の交換レンズは、製品仕様がそのまま製品を指す名前になっていることが多く、こちらのレンズも前面の「Planar 1.4/50 ZK T*」が仕様兼製品名です。レンズ構成がPlanarで、焦点距離50mm、開放F値が1.4のレンズであることが分かります。ZKはカメラへの固定部分、いわゆる対応マウントを表していて、ZKはペンタックスのKマウントです。T*はレンズの光学性能を構成するレンズコーティングの名前ですね。
このレンズは実在するレンズで、光学製品の名門ZEISSの製品です。私もニコンFマウント対応のものを持っていました。Planar 1.4/50はポートレートに使いやすく、このシーンにぴったりのレンズでリアリティーを高めていると思います。ただ、T*は実際のレンズでは赤の文字なので、その差異だけが残念です。画竜点睛を欠くといったところ。
さて、レンズはPlanar 1.4/50だったとして、次に気になるのはカメラ本体です。なんとなくこのシルエットは見覚えがありますが、別のシーンでそのものズバリな描写があります。
カメラ本体はソニー製だったというわけです。メーカーロゴがそのまま登場するのは新鮮ですね。エンドロールにソニーの名前があったかどうかは覚えていませんが、きっとあったのでしょう。C1/C2のカスタムボタンと数字が印刷された露出補正ダイヤルがあるということで、α7 IIIでしょうか。α7 IIIは私も愛用していて、作中に登場するのはなんとなく嬉しいです。
α7 IIIの対応マウントはEマウントで、KマウントのPlanar 1,4/50 ZKはそのままでは取り付けできません。この点もちゃんと納得がいく描写になっていて、「KION P/K-」の文字がそれです。この部分はマウントアダプターですね。おそらくKIPONの「P/K-NEX」だと思います。P/K-NEXはオートフォーカスに対応しませんが、Planar 1.4/50はマニュアルフォーカスのレンズなので問題なし。KIPONではなくKIONになっているのは、許可が取れなかったのかもしれません。
ちなみに、Kマウントのレンズを選んでいる理由は作中からは読み取れませんでした。元々ペンタックスのカメラで使っていてソニーに乗り換えたか、たまたまKマウント対応のレンズが安かったのか、いろいろと想像が膨らみます。このカメラを操るのは主人公の協力者である高専2年生の工藤真司で、星好きからの写真好きが高じて主人公に協力するという設定なので、周囲の写真好きな誰かから譲り受けたという線もありそうです。
あらためて注目してみると、いろいろな発見がありますね。注目に耐えられるだけの描写が素晴らしいです。写欲も高まりました。もちろん、表現したいことから逆算して必要なだけのディテールがあれば問題ないわけですが、自分の興味がある対象がこうやってきっちり描写されていると嬉しいですね。あまりにも的外れだったり雑な描写では興醒めしてしまいますし。
私も真司くんのように、腰を据えて写真を練習してみようかな。星の撮影は時間と場所の点でハードルが高いので、他にほどよく挑戦できて好きになれる被写体を探してみようと思います。若干、手段が目的になっている気もしますが、趣味なのでヨシ。