はじめに
長野県と群馬県の県境を通る滋賀草津高原ルートは、春先の冬季閉鎖が解除された直後に訪れると雪壁が見られる絶景の高原ルートです。国道の中では最高標高地点を通ることもあって、自転車乗り、特にヒルクライムを嗜む人にとっては憧れの場所です。
通称「渋峠」と呼ばれるこちらには、私も何度か訪れたことがあります。昨年は開通直後に挑戦してみたものの、悪天候で通行止めが解除されず残念な思いをしました。今年も絶景を見るべく春の渋峠に行ってきました。
渋峠は長野側と群馬側のどちらからでも挑戦できます。今回は(も??)群馬側からのアプローチにしました。群馬側は標高1000mほどの草津温泉からのスタートになり、獲得標高が少なくて済むのです。ライド後の草津温泉も魅力ですしね。今回はライド後に一泊して、2日に渡り渋峠に挑戦する行程です。草津温泉までは車でトランポしました。
ちなみに、長野側からは獲得標高が2000mに迫るビッグヒルクライムになるので、ある程度の覚悟が必要です。
草津からスタート
駐車場に車を停めてライドの準備をしたら、いよいよ出発。
しばらく進んで天狗山ゲートへ到着です。白根山の火山活動により、夜間通行止めだったり全面通行止めだったりと翻弄された渋峠ですが、今は通行可能です。火口湖である湯釜には行けませんが、通れるだけでもありがたい。
天狗山ゲートを通過してしばらくは、枯れ木の間を登っていくことになります。この日は晴天で暑いくらい。夏の格好でも問題なかったほどです。
ところどころに残雪が見えます。例年より雪の量が少なく見えます。暖冬の影響でしょうか。やはり温暖化??
道の向こうに雪化粧した白根山が見えます。いやー、眼福。いい景色です。これからあそこまで登るかと思うと、気分がアガります。
志賀草津高原ルートは国道292号線、渋峠を越えて長野側には湯田中と呼ばれる温泉地があります。峠の両側に温泉地があって、ヒルクライムにはぴったり。理想的な環境だと思います。
さらに進むと「駐停車厳禁」のおどろおどろしい文句が踊る看板が登場します。
殺生河原
駐停車厳禁の理由は火山ガスです。この辺りは殺生河原と呼ばれ、火山性のガスが噴出していて立ち止まると危険なため、駐停車厳禁というわけです。
殺生河原の近くはスキー場のリフト乗り場があって開けた場所になっています。残雪もあって映え写真が撮影可能。
ひとしきり撮影と景色を楽しんだら、再び出発です。殺生ゲートを抜けて先へ!
この日は風向きのおかげか鼻をつく匂いは薄かったように思います。
匂いはしなくとも、剥き出しの岩肌が火山地帯であることを思い出させてくれます。
荒涼とした風景は、日常ではなかなか見られません。非日常の景色を楽しみながら、足早に危険地帯を抜けました。
絶景の高原ルートを行く!
殺生河原を越えると、いよいよ高原ルートが本気を見せてきます。
森林限界を越えて、高い木がなく視界が開けます。これから進む道が見渡せるのが魅力。
振り返ると、もちろん登ってきた道も見渡せるわけです。絶景というだけでなく、これを自分の力で登ってきたと思うと達成感も味わえます。
空は雲ひとつない快晴。絶好のサイクリング日和です。
岩肌と新緑、そして残雪と青空の対比が美しい。一幅の絵画のようです。
岩肌に貼りつくようにして道が作られていて、先人の苦労がしのばれます。おかげで、こうして気軽に絶景を楽しめるわけです。
少なめと言えど、場所によってはまとまった雪が見られました。何ヶ所かで工事も行われています。維持管理で通行可能状態が維持されますように。
これだけの絶景の中を駆け抜けてしまうにはもったいない。景色を楽しみながら、ゆっくりのんびり登っていきました。
何ヶ所かあるZ字になった坂道。こちらのZ坂は青空が近くてステキだと思います。
眼下には、小さくなった草津の町並みが見えます。こんなところまで登ってきたのか、と感慨深い。
この辺りまで登ってくると人工物が少なくなります。空が青い、近い!
見晴らしのよい場所には駐車スペースと展望台が設けられています。車で来ても要所要所で絶景を楽しめます。おススメ。
先ほどよりも小さくなった草津の町並みです。
何度目かのZ坂。直登しないおかげで勾配はゆるやかです。
そろそろ、てっぺんが近づいてきました。
白根山にて
志賀草津高原ルートのてっぺんが、草津白根山です。
茶色とグレーの混じった山肌が草津白根山ですね。その向こうに火口があります。火山活動の影響で現在は立ち入り禁止。
道路脇に避難所が用意されています。活火山の近くにいることを思い出させてくれますね。
白根山の標識が雪に埋もれていました。
レストハウスなどの建物もありますが、現在は閉鎖されています。建物があって人がいないと、寂しげな雰囲気がより強調されますね。いつか火山活動が落ち着いて、火口湖の湯釜が見学できますように。
県境へ進む
白根山を後にして、県境付近に向かって進みます。
途中の三叉路が万座ゲートです。秋に毛無峠へ行った際に登ってきた道ですね。毛無峠の封鎖が解除されるのはもうしばらく先です。解除されたらまた挑戦してみたいものです。
晴天のおかげで、遠くアルプスの山々が見渡せました。
天気ばかりは人の身にはいかんともし難いです。
晴天の幸運を噛み締め、景色を楽しみながら進んでいきます。
絶景に気を取られて、なかなか前に進まないんですけどね。
途中の駐車スペースに立ち寄り。
前回訪れた際は、この辺り一面が雪に覆われていたような記憶があります。やはり雪の量は少ないか。
山田峠
しばらく進むと山田峠が見えてきました。
県境の向こう側まで一望できる、絶景スポットです。
ぽつんと立てられた山田峠の標識がもの悲しい。
ここには中央分水嶺があります。降った雨の行き先がここを境に変わると思うと、壮大ですね。海は遥か遠くなのに、行き先がここで決まるわけです。
雪壁の絶景
しばらく進むと、道の両側に切り立った白い壁が見えてきます。いわゆる雪壁ですね。
今年の雪壁は、高さ4〜5mくらいでしょうか。立派なものです。
人間と比べると、雪壁の高さが実感できるというもの。
皆さん、思い思いに絶景を楽しんでいました。楽しんでいる人を見ると、こちらまで楽しくなってきて幸せ。
空には少し雲がかかってきました。しかし、だいたい青空なので問題なし。
今年は荒天での通行止めもなく、無事に来られてよかったです。
雪壁の近くには駐車スペースがあって、車の人も安心。雪壁までは少し歩く必要がありますけど。
愛車の調子も絶好調。今回は車のトランポなので、自転車に装着する荷物が少なくて快適です。ツーリングだとサドルバッグに輪行袋や着替えを詰めないといけませんから、重量がかさみがち。
雪の回廊を目に焼き付けたら、先に進みます。
日本国道最高地点
雪の回廊からしばらく進むと、国道最高地点です。
標高2172m、ここより高い国道なし。
最高地点だけあって見晴らしもよし。
周囲が一望できます。天候によってはガスや霧で真っ白、何も見えないこともあります。この日はまたとない晴天で幸運でした。
バイク乗りも自転車乗りも車の方も、和やかに談笑しながら譲りあって写真撮影を楽しんでいました。
渋峠ホテル
国道最高地点を後にしてしばらく進むと、県境に位置する渋峠ホテルが見えてきます。
標高は少し下がって2152mです。道の先は長野県です。麓の湯田中温泉まで20kmのダウンヒルになります。
青空に渋峠の看板が映えますね。
県境のペイントが出迎えてくれます。
建物も、県境の左右で色違いになっていて面白い。
ホテル近辺はゲレンデになっています。春先にも関わらずゲレンデはオープンしていて、スキーヤーやスノーボーダーが思い思いに滑走を楽しんでいました。
自転車では、さすがにスキーやスノーボードを持ってくるのは難しいです。ファットバイクで登ってきてそのまま雪原に突入、ならアリか!?
渋峠ホテルは、夕方近くになると宿泊客優先になります。日帰りのホテル利用はお早めに。
いつか渋峠ホテルに宿泊してみたいものです。
長野県側
せっかく県境まで登ってきたので、少しだけ足を伸ばして長野県側に行きました。
渋峠は長野県側も絶景なんですよね。群馬県側と違った趣があります。
雪化粧の山々を遠くまで見渡せるのが魅力。
スノーシェッドの道が遠くまで続いていく様子が一望できます。
日差しが強くなってきて、もはや初夏といったところ。
冠雪したアルプスの山並みも、よく見えていました。
調子に乗って進みすぎると登り返しが大変。景色を楽しみながらゆっくり進みます。
眼下にはつづら折りのダウンヒルルートが見えています。さらに進むと、あのルートを下っていくことになるわけです。
この日は草津で一泊の予定なので、どこかで引き返さないと、というわけで、引き返すにちょうどよい場所がこちら、横手山ドライブインです。食堂だけでなく自販機やトイレもあって、休憩や補給にぴったり。
眺めも良好です。
朝早くから行動したので、まだまだ時間はたっぷりあります。せっかくここまで来たので、あっさり引き返すのはもったいない。景色を眺めながらこの後の予定を検討したのでした。